なぞる

なんか書いたやつ

2019-01-01から1年間の記事一覧

生活

ぼくは生活ができない。 小学生の頃の通信簿の「生活」の欄は、「もう少し」と「できる」ばかりで、「よくできる」は一つもなかった。特に、「せいりせいとん」はいつも「もう少し」で、先生の手書きのコメントにも「せいりせいとんをがんばりましょう」とあ…

言い返す

絶対に「そうですね」と同意を示したくない発言がある。性差別、人種差別、障がい者差別、あるいは自分の大切なものを傷つけるような発言、いかなる文脈であろうと、同意してはならないことばがある。 それでも、言い返せないときがある。というより、多くの…

文化祭と鬼

1 祭りが苦手だ。パーソナル・スペースが人より広いので、あんな人口密度の高いところに行きたくないし、客引きもうざい。一番嫌いなのは、「ちょっとした顔見知り」の人が客引きのために声をかけてくることだ。普段なら、道ですれ違ってもお互い気づいてな…

朝5時から花見をした話

部屋の掃除をしながらなんとなく桜が見たくなって、だけど普通に花見をするんじゃなんかつまんねえな、と思って、友人に急にラインを送った。3ヶ月ぶりのライン。 「朝クソ早起きして花見してコーヒー飲んで解散する遊びしようぜ」 すぐ既読がついて、「いい…

本を読む毎日

本棚を久しぶりに整理した。 本を全て棚から下ろし、一冊ずつホコリを払い、ジャンルごとに並べていくと、いくつもの思い出が蘇ってくる。思い出といっても、大したストーリーじゃないのだけど、この本旅行に持っていったなあとか、すごく面白そうだと思った…

読めない

文章が読めない。文字をいくら目で追っても、目線が文字を上滑りしているような感覚があって、頭に入ってきているような気がしない。頭に入っているような気がする時もあるが、正しく入っている保証はどこにもない。ページをめくりきり、パタンと本を閉じた…

コンパ

酔いがなんだか醒めてきたときに、ブルーシートが敷かれたコンパ場をぼんやり眺めるときがある。 理性を失った「体」の群れが、本能のままにくっついたり離れたりしている。彼らはもはや「人」というより「体」になっている。体自体が飲み、体自体がコールを…

脳みそとiPhone

1 パソコンに、「sakata」と打ち込むと、勝手に「酒田」と変換してくれる。iPhoneでも、「さ」と打つだけで、サジェスト機能の一番最初に「酒田」が来る。ああ、このiPhoneはぼくの名前のことを記憶してるんだ、と思って、少し嬉しくなる。 図書館のパソコン…

右翼と左翼、あるいは下ネタについて

「犬派?猫派?」「は?」 ぼくは犬も猫も好きだし、犬も猫も嫌いな人もいるだろう。二択の質問をするときは、選択肢を反対の内容にするべきである。賛成・反対のように。この質問を考えた奴は、犬にあらずんば猫であるとでも思っていたのだろうか。 似たよ…

発射されない拳銃

1 チェーホフは「物語に拳銃が出てきたら、それは発射されなくてはいけない」と言った。*1ストーリーを語る時に、必然性のない要素を入れてはならない、という意味らしい。たしかに、すべての伏線が回収された物語は美しいし、「これは伏線だな」と思ってい…

とりあえず笑っとけ

コミュニケーションが不得意で、というか苦手意識があって、誰かとことばを交わした夜は、自分の受け答えを思い出して顔から火が出るほど恥ずかしくなる。あの時、ああ言えば良かったかな。なんか勘違いされていないかな。嫌な思いをさせていないかな。そん…

無知の知と言い切りの美

1 中学校のとき、何かの試験の解答欄に「無知の知」と書かされたことを覚えている。国語の試験だったのか、それとも社会の試験だったのか覚えていないけれど、返って来た答案用紙にマルがついているのを見て、ものすごくアイロニーを感じたことは覚えている…

褒める

「“She is beautiful.”という文章は残酷だ。なぜならば、指示されていない女性全てを相対的に not beautifulとみなすものだからだ。」 という要旨の話をする予備校の先生がいた。そいつはセクハラをするクズ野郎で、ぼくは好きじゃなかったけれど、この話は…

ぼくたち、わたしたち

小学校の卒業式に、「別れの言葉」というものがあった。誰かが「一年生」と言うのを合図に、みんなで大声で「いちねんせ〜い」と繰り返すアレだ。男の子全員が「ぼくたち」と大声を張り上げ、女の子が「わたしたちは」とそれに続き、全員で声を合わせた「卒…

本を食べる先輩——村田沙耶香『私が食べた本』

次の本についての感想です。 村田沙耶香『私が食べた本』朝日新聞出版,2018. 私が食べた本 作者: 村田沙耶香 出版社/メーカー: 朝日新聞出版 発売日: 2018/12/07 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る カバンを持たないで外に出るのが何となく手持ち…