なぞる

なんか書いたやつ

2022/10/16


 李禹煥の展覧会に行った。乃木坂の新美術館。良く訪れる美術館のひとつだ。


 展覧会に入場する前に、なんとなく落ち着きが足りないように感じたので、サカナクションのインスト楽曲を目を閉じて聞いた。落ち着くこと、静かであることが、李の作品を観るうえで重要だと直感したからだ。


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 作品を観ることは、言語による批評を行うためにあるわけではない。それに、特にある作品について論じたいとも思わない。芸術を〈鑑賞する〉という行為とは別に、〈親しむ〉という行為があって良いし、あった方が良いと思う。


 もっと器や書や、あるいはハンカチや木々に親しむ時間をとりたいと思う。親しむとは、事物との距離感を知り、記憶を纏わせることだ。


 李の作品には、李のなかの記憶や配置があるのだろう。

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 配置。新美術館は内装も外装も美しい。1階から見ると塔のように見える2階のカフェで、アプリコットのタルトを食べた。


 外側にあったものに、いつのまにか包まれていくことがある。不思議に思うが、そんなに不思議ではないとも思う。西田幾多郎のことを考える。

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 AirPodsには最近、ノイズキャンセリングだけでなく、外部音取り込み機能がある。かなりおすすめだ。いま、公園で虫の声を聞きながら、耳の奥で山口一郎が〈消えた〉と歌った。


 しずけさとはなんだろう。最近わたしはしずかであるために歌を聞いている気がしている。