なぞる

なんか書いたやつ

むっつりすけべと自殺

何気ない会話の最中に、下ネタが浮かんでしまう。言い間違えがそっちのやつにしか聞こえなかったり、話が暗喩にしか聞こえなかったり。うわー下ネタ言いたいなー、絶対面白いのになあー。でも周りに1女いるしなあ。言いたいのに言えない。むずむず。


むずむず。むずむず。 

 

二人きりになった時とか、話が途切れた時に、僕は我慢できなくなってこう言う。
「さっき、あれにしか聞こえなかったよね?」
そうすると相手は大抵吹き出して「それな!www」と答える。二人とも、言うかどうかためらっていたのだ。
 
むっつりすけべはきっと苦しいだろう。頭に下ネタが浮かんでも言うことができない。
親しい人にのみ言う「選択的むっつりすけべ」ならばまだましだが、誰にも言わない「真正むっつりすけべ」は大変だ。思いついた下ネタは吐き出すことができないから、脳みそをたぷたぷに充してしまう。誰かが下ネタを話しても、それに乗っかることができない。家族でくつろいでテレビを見ているとき、ラブシーンが流れた時みたいに、ただ無関心を装う。「へえー」みたいな。これはきっと、つらいに違いない。
 
こんなことを言うと、全国の真正むっつりすけべの諸君には怒られてしまうかもしれない。選択的むっつりすけべのお前に何がわかる、こちとら一年中その「むずむず」をかかえてるんだ。ごもっともです。
 
でも、僕にはわかる気がするんだ。そういった「むずむず地獄」を僕も味わっているからだ。
 
16歳のとき、僕の親友は電車に飛び降りて亡くなった。
 
重いでしょ?重いのだ。こんな重い話されたらどうする?「うん、、、」と「そっか、、、」しか話せない病気にかかる。顔は引きつる。苛立ちさえ覚えるかもしれない。「なんでその話するんだよ」的な。
 
ただ、僕の頭にはその話がよく浮かぶのだ。電車を見れば自殺が浮かぶ。「友達がさー」って言われたら、親友の面白エピソードが浮かぶ。花を見たら踏み切り沿いに花を供えに行ったこと。青春拗らせた話なら僕だってアニメじゃなくて自殺で拗らせた。ぽんぽん浮かぶ。浮かぶ度ぐっと飲み込む。誰に話したらいいかわからない。プライベートすぎる。絶対空気が重くなる。笑える話にしたくても上手くできない。
 
昔裏垢でこんなつぶやきをしたことがある。
 
「自殺した友達の話でゲラゲラ笑ってくれる人が欲しい」
 
そのツイートにファボがついた。なんか希望の星に見えた。むっつりすけべな地獄から抜け出せるかもしれない、と思った。
 
ということで、たまにその話を親しい人にするようになった。昔は誰にも話せなかったし、大学に入るまで話そうとすると涙が溢れて止まらなくなった。
 
むっつりすけべが一番すけべな気がする。それと同じように、悲しい話をずっと抱えていると、どんどん拗らせてしまう。
 
むっつりすけべが下ネタを言ったら、きっとこっちが引くくらいのやつを言う気がする。なぜなら下ネタが頭の中でぐるぐる回って、凝縮されているからだ。
 
それと同じように、僕の自殺の話も引いてしまうようなものになってしまっているかもしれない。でも引かないでほしい。ゲラゲラ笑わなくてもいい。「こないだうちの犬がさー」から始まる世間話と同じ温度で聞いてくれればいいから。
 
もちろん、誰彼構わず言うわけではないよ。TPOを弁えず下ネタを言うやつなんかロクでもないからね。