なぞる

なんか書いたやつ

國分功一郎のファイト・クラブ

" data-en-clipboard="true"> ファイト・クラブをAmazon Primeで見た。友達が面白かったと言っていて、気になっていた。 " data-en-clipboard="true"> 自分の感想を言うと、「ぽかーん」という感じ。終盤の仕掛けのあたりで、どんどん世界が内側に閉じていく…

「聞く」の実際。——信田さよ子・上間陽子『言葉を失ったあとで』感想——

◇信田さよ子・上間陽子, 2021『言葉を失ったあとで』筑摩書房. 言葉を失ったあとで (単行本) 作者:信田さよ子,上間陽子 筑摩書房 Amazon 「聞く」の実際。 帯に書かれた大きな文字。対談を読みながら、「聞く」ってなんだろうということを、懸命に考えなくて…

Rex Orange County "It's Not the Same Anymore"——和訳・分析・エッセイ——

Rex Orange County "It's Not the Same Anymore"——和訳・分析・エッセイ—— Rex Orange Countyの "It's Not the Same Anymore"を最近良く聴いている。彼の3枚目のアルバム"Pony"の最後に収録されているこの曲は、YouTubeでは音源が377万回、ライブが210万回…

時をうばって

おしゃべりはひとの時間を奪うことそう思いつつ夜はふけたね *** ひとの時間をうばうことに、つねに自覚的でいられるわけじゃないけれど、ふとしたときに、ぼくが誰かと時間を過ごすということは、そのひとの人生の有限な時間をうばうことなのだな、と思…

依存・暴力・電話

・(ナカグロ)が好きで、よく使う。何か結びつかないものを結びつけることは、面白いと思う。ナカグロは、つなぎ目のことばを一つも用いずに、強制的に、そこに繋がりを見出させる作用があって、しかもそれがどんな関係なのかも提示しない。その直接性が、…

ピントを合わせる

小学校5年生まで住んでいた家に、もう一度住むことになった。駅からずいぶん遠かったはずの家は、身体が大きくなった今では10分もしないうちに着くことができた。白い塗装はところどころ剥がれて、あざやかな青色のドアを引き立たせていた。懐かしさをふくみ…

ぐるぐる

電車の中であくびをする。ああ、ねむたい。涙を拭きながら車内を見渡すと、見知らぬおじさんもあくびをしている。きっとあくびがうつったのだろう。ふふ、全く知らない人のあくびにつられてしまうなんて、人は案外もろいものだ、なんて考えていると、さっき…

げらげら

電車を見ると、亡くなった友達のことを思い出してすぐに泣いてしまうこと。さっきまで覚えていたことをすぐに忘れてしまったり、知り合いの名前が思い出せなくなったりすること。歯磨きをしていたはずなのに気づいたら歯ブラシを失くしてしまったこと。ぼく…

ぼくのよろこび

「自分が他の誰かではなくて、自分であってよかったと思うのはどんなとき?」 そんな質問を知り合いにしたことがある。その子はすこし悩んでこんな風に答えてくれた。 「他の人では思いつかないようなことを、自分が思いつくときとか、自分では絶対にしない…

生活

ぼくは生活ができない。 小学生の頃の通信簿の「生活」の欄は、「もう少し」と「できる」ばかりで、「よくできる」は一つもなかった。特に、「せいりせいとん」はいつも「もう少し」で、先生の手書きのコメントにも「せいりせいとんをがんばりましょう」とあ…

言い返す

絶対に「そうですね」と同意を示したくない発言がある。性差別、人種差別、障がい者差別、あるいは自分の大切なものを傷つけるような発言、いかなる文脈であろうと、同意してはならないことばがある。 それでも、言い返せないときがある。というより、多くの…

文化祭と鬼

1 祭りが苦手だ。パーソナル・スペースが人より広いので、あんな人口密度の高いところに行きたくないし、客引きもうざい。一番嫌いなのは、「ちょっとした顔見知り」の人が客引きのために声をかけてくることだ。普段なら、道ですれ違ってもお互い気づいてな…

朝5時から花見をした話

部屋の掃除をしながらなんとなく桜が見たくなって、だけど普通に花見をするんじゃなんかつまんねえな、と思って、友人に急にラインを送った。3ヶ月ぶりのライン。 「朝クソ早起きして花見してコーヒー飲んで解散する遊びしようぜ」 すぐ既読がついて、「いい…

本を読む毎日

本棚を久しぶりに整理した。 本を全て棚から下ろし、一冊ずつホコリを払い、ジャンルごとに並べていくと、いくつもの思い出が蘇ってくる。思い出といっても、大したストーリーじゃないのだけど、この本旅行に持っていったなあとか、すごく面白そうだと思った…

読めない

文章が読めない。文字をいくら目で追っても、目線が文字を上滑りしているような感覚があって、頭に入ってきているような気がしない。頭に入っているような気がする時もあるが、正しく入っている保証はどこにもない。ページをめくりきり、パタンと本を閉じた…

コンパ

酔いがなんだか醒めてきたときに、ブルーシートが敷かれたコンパ場をぼんやり眺めるときがある。 理性を失った「体」の群れが、本能のままにくっついたり離れたりしている。彼らはもはや「人」というより「体」になっている。体自体が飲み、体自体がコールを…

脳みそとiPhone

1 パソコンに、「sakata」と打ち込むと、勝手に「酒田」と変換してくれる。iPhoneでも、「さ」と打つだけで、サジェスト機能の一番最初に「酒田」が来る。ああ、このiPhoneはぼくの名前のことを記憶してるんだ、と思って、少し嬉しくなる。 図書館のパソコン…

右翼と左翼、あるいは下ネタについて

「犬派?猫派?」「は?」 ぼくは犬も猫も好きだし、犬も猫も嫌いな人もいるだろう。二択の質問をするときは、選択肢を反対の内容にするべきである。賛成・反対のように。この質問を考えた奴は、犬にあらずんば猫であるとでも思っていたのだろうか。 似たよ…

発射されない拳銃

1 チェーホフは「物語に拳銃が出てきたら、それは発射されなくてはいけない」と言った。*1ストーリーを語る時に、必然性のない要素を入れてはならない、という意味らしい。たしかに、すべての伏線が回収された物語は美しいし、「これは伏線だな」と思ってい…

とりあえず笑っとけ

コミュニケーションが不得意で、というか苦手意識があって、誰かとことばを交わした夜は、自分の受け答えを思い出して顔から火が出るほど恥ずかしくなる。あの時、ああ言えば良かったかな。なんか勘違いされていないかな。嫌な思いをさせていないかな。そん…

無知の知と言い切りの美

1 中学校のとき、何かの試験の解答欄に「無知の知」と書かされたことを覚えている。国語の試験だったのか、それとも社会の試験だったのか覚えていないけれど、返って来た答案用紙にマルがついているのを見て、ものすごくアイロニーを感じたことは覚えている…

褒める

「“She is beautiful.”という文章は残酷だ。なぜならば、指示されていない女性全てを相対的に not beautifulとみなすものだからだ。」 という要旨の話をする予備校の先生がいた。そいつはセクハラをするクズ野郎で、ぼくは好きじゃなかったけれど、この話は…

ぼくたち、わたしたち

小学校の卒業式に、「別れの言葉」というものがあった。誰かが「一年生」と言うのを合図に、みんなで大声で「いちねんせ〜い」と繰り返すアレだ。男の子全員が「ぼくたち」と大声を張り上げ、女の子が「わたしたちは」とそれに続き、全員で声を合わせた「卒…

本を食べる先輩——村田沙耶香『私が食べた本』

次の本についての感想です。 村田沙耶香『私が食べた本』朝日新聞出版,2018. 私が食べた本 作者: 村田沙耶香 出版社/メーカー: 朝日新聞出版 発売日: 2018/12/07 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る カバンを持たないで外に出るのが何となく手持ち…

目次(2018)

はじめに このブログはもともと、自分の書いた文章をなんとなく載せていたものだった。「何を書くためのブログ」みたいな趣旨がなかった。10月ごろからなんとなくその趣旨の輪郭が出来上がってきた。「やさしいことばで、背伸びしないで文章を綴る」という趣…

やさしいことば

先生が何を言っているかわからない時がある。「アンシャン・レジーム」がどうたら、「マックス・ウェーバー」がどうたら、「ブレグジット」がどうたら。きっと何か面白いことを言っているのだろうが、聞いているこちらはちんぷんかんぷん。「みなさんご存知…

想像力のないぼくは夢を見る

母に何度も「相手の立場に立って考えてみなさい」としつけられた。ぼくはひどいことをたくさん言ってしまう子どもだった。それはきっと悪意からくるものではなかった。周りの人たちのことばを真似しているうちに、そうなってしまったのだと思う。 ぼくたちが…

絵の前ではひとり

美術館に行くことが好きだ。もちろん絵画や彫刻を見ることも好きなのだが、それ以上に「美術館」という場所そのものが好きだ。普段そんなことに関心がなさそうな人が、わざわざ絵を見るためだけにちょっと遠出をして、みんなで同じ絵を見るという営みは、よ…

考えてから話せ

小さい頃、父親に「考えてからものを言え」としょっちゅう怒られていた。ぼくはおしゃべりだったけれど、途中で自分でも何が言いたいのかわからなくなってしまうことが多かった。授業で習ったばかりのことばや、本で読んだばかりのことばを使ってみたかった…

剽窃行為集合体

レポートを書くときには剽窃してはいけない。大学1年生の授業で散々教わったことだ。「これは剽窃行為にあたります」の羅列みたいなパンフレットをもらい、「剽窃とは何か」みたいな話を大きな教室で50分くらい聞かされた。まあ、それは役にたったといえばた…